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Japanische Klassiker mit Furigana

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いくどめかのさいご

幾度目かの最期

久坂 葉子

Lesen Sie 幾度目かの最期 (いくどめかのさいご) von 久坂 葉子 (くさかようこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 59.103 Zeichen · 121 Bildschirme

Aozora Bunko

しかし今日、私はふらふらと、ついふらふらとAまで来てしまったのだ。

数本の煙草が橋の手すりにもみけされ、川へ流れた。鏡を取り出し口紅をぬりつける。五月の太陽がまたギラッと鏡にうつり、私の情慾をむやみにあおる。五時になる。立上って先刻の道を今度ははっきりとした気持のまま歩いて行く。

(会おう。会おう。会って話をしよう。あの人の言葉にふれるだけのことがどうしていけない。長く会わなかった知人に挨拶をする。それだけなのだ。――いや、そうじゃない。会って話をするだけなら誰とでもいい筈、私は心の底で何を願っているのだろう。)

歩みはのろくなる。が、戻りはしない。

(私は求めている。あの人の抱擁を。)

白壁の塀にそって角をまがる。とジープが疾走して来る。瞬間、轢かれようと小走った。だが危いとこで立止る。黒んぼのぎょろりと光る眼がこちらをむいて笑いかける。わけのわからぬ言葉をすてて、いきおいよくジープは去る。

(轢かれればよかった。すれば私は否応なしにあの病院にかつぎこまれる。もう彼の名を白い板にはっきり記したその病院が間近にみえているのだから。そうして私は彼の手で介抱されるのだ。