Japanische Klassiker mit Furigana
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いくどめかのさいご
幾度目かの最期
久坂 葉子
Lesen Sie 幾度目かの最期 (いくどめかのさいご) von 久坂 葉子 (くさかようこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 59.103 Zeichen · 121 Bildschirme
縁側にすわっていた人が少し取り乱してせわしげに云った。
「帰りましたわ、でもすぐに又行ってしまいます」
「何故、何故行ってしまうのだ」
「私、こわいのです」
女の夫であった。
「どうするつもりだ」
女はわらった。わらったのかわらわなかったのかわからぬ程に。
「何処へゆくのだ」
女は首をかしげた。そして、さあ、と小声で云いながら天を見上げた。
「明日は雨になりそうですわ」
女はゆっくりひとりごとを云うと、笹むらをひょいとまたいで庭を出て行った。
「阿難」
夫は後から呼んだ。女は戻らなかった。返事もしなかった。
春の宵はじき闇の中にとけこんでゆく。
女は朝出た家へ帰った。人が居た。一人居た。女が出る時も居たのだが、その人は今、障子をたてきった四畳半の中に居た。女の部屋であった。水仙のある。女は障子を開けようとした。
「お待ち」
中から声がした。女は障子越しに、話をはじめた。
「最初、まいりましたのは、川のほとりの家でございます。叔母君は御留守でございました。新しい女中が出て参りました。次は狐のような女に会いました。私の想像していた通りの人でございました。それから、例の独身の自称芸術愛好家には会わずじまいでしたが、彼に支那の刀を送りました。