Japanische Klassiker mit Furigana
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おもいだすこと
思い出すこと
宮本 百合子
Lesen Sie 思い出すこと (おもいだすこと) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.573 Zeichen · 6 Bildschirme
私共も、自分で探していたのでは到底、何時になったら見付かるか、見当もつかないような有様であったので、窮した結果、頼んだのではあったが、始めて行った時には、不安な、油断のならない心持がした。
多分、赤門の少し先、彼方側で、大きな土管屋か何かの横に入った処にその家はあった。とっつきは狭い格子戸で、下駄を脱ぎ散らした奥の六畳と玄関の三畳の間とをぶっ通しにして、古物めいた椅子と卓子とが置かれているのである。
男が二人いて、それぞれ後から後から来る客にアッテンドしている。年は二十八九と四十がらみで、一目見ても過去にまとまった学歴も何もなく、或る時代、或る時期の社会的需要に応じて、職業を換えて行く種類の人間らしく見えた。よくある、商売人とも政治屋とも片のつかない一種のタイプなのである。
「お上りなさい」
と幾度も云うので、私共は、上へ上り、その椅子にやや改って腰を下した。規則をきき、一ヵ月、貸家の通知書を送って貰うために、五円ほどの金を払ったと覚えている。
その変に捩くれた万年筆を持った男が、帳簿を繰り繰り、九段にこんな家があるが、どうですね、少々権利があって面倒だが、などと云っている時であった。