Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

おもいでのき

思い出の記

小泉 節子

Lesen Sie 思い出の記 (おもいでのき) von 小泉 節子 (こいずみせつこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.841 Zeichen · 62 Bildschirme

Aozora Bunko

山が虫の声になってしまって居るようで、それでしんとして淋しうございました。『この近くに宿がないか』と車夫に尋ねますと『もう少し行くと人家が七軒あって一軒は宿屋をするから、そこで勘忍して下さい』と申すのです。車が宿に着きましたのが十時頃であったと覚えています。宿と云うのが小さい田舎家で気味の悪い宿でした。行灯は薄暗くて、あるじは老人夫婦で、上り口に雲助のような男が三人何か話しています。二階に案内されたのですが、婆さんが小さいランプを置いて行ったきり、上って来ません。あの二十五年の大洪水のあとですから、流れの音がえらい勢でゴウゴウと恐ろしい響をしています。大層な螢で、家の内をスイスイと通りぬけるのです。折々ポーッポーッと明るくなるのです。肱掛窓にもたれていますと顔や手にピョイピョイ虫が何か投げつけるように飛んで来て当るのです。随分ひどい虫でした。膝の近くに来て、松虫が鳴いたりするのです。下の雲助のような男の声が、たまに聞えます。はしご段がギイギイと音がすると、あの悪者が登って来るのではないかなどと、昔話の草艸紙の事など思い出して心配していました。婆さんが御膳を持って上って来ました。