Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうふのまぼろしへいだんいん
恐怖の幻兵団員
大倉 燁子
Lesen Sie 恐怖の幻兵団員 (きょうふのまぼろしへいだんいん) von 大倉 燁子 (おおくらてるこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.784 Zeichen · 28 Bildschirme
四年も、五年もの間、どうして暮らしていたのか、訊きたい話は山のようにあるのに、何を訊いても話してくれません。夫は妻の私でさえ気をゆるせないというような様子ばかりして、ほんとに変な男になっていました。
医者は強度の神経衰弱だと云います。睡眠剤の力を借りなければ眠れぬ夜がつづきました。
真夜中にふいに飛び起きて、あたりをきょろきょろ見廻わすかと思うと、急に恐ろしそうに身震るいして、机の下にかくれたりするんです。その時の顔の凄さったらありません。
たしかに一雄は普通の状態でないと思うようになりました。元来気の弱い、神経の細い男でしたから、出征中から故国の土を踏むまでには、恐い思いやら、命がけの辛い事もあったでしょうし、きっと、口には云えない、いろんな生活をしてきたのでしょう。彼の心を脅かすようなこともなかったとは云われません。
私は一雄の窶れた顔を見ながら、ひとりでに涙が頬を伝わるのをどうしようもありませんでした。私がこれほど苦労して待っていた夫が、こんな冷めたい、変な人になってしまったのかと思うと、悲しくってどんな秘密でも、私にだけ打ち開けてくれたら――と、しみじみ思うのでした。