Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かなしいごかい

悲しい誤解

豊島 与志雄

Lesen Sie 悲しい誤解 (かなしいごかい) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.139 Zeichen · 23 Bildschirme

Aozora Bunko

みさ子だって、さよ子だって、遠くに見える。憂鬱とは、自分と外界とを距てる霧だ。

みさ子は相変らず、そうだ、一昨日と相変らず、鼻の高い細長い顔で、睫毛の影の濃い眼眸をして、背が高く痩せている。戦争未亡人でこの家の中年のお上さんの片腕となっている。笑顔はあまり見せないが、声は調子がいい。客たちからはみさ子さんと呼ばれる。紫を主調にした縞模様の着物だ。

さよ子は相変らず、丸い顔で、よく肥っていて、いつもにこにこしている。少し近眼らしい眼眸だが、眼鏡はかけていない。戦争中、埼玉県下から徴用女工として東京に出て来て、そのまま居ついて女給になったのである。客たちからはさよちゃんと呼ばれる。赤を主調にした花模様の着物だ。

彼女たちを珍しく見るような気持で眺めながら、私はコップの酒をすすった。そして心では、他のものを眺めていた。――今頃、綾子はどうしていることだろうか。妻はどうしていることだろうか。姉はどうしているだろうか。姉の子はどうしているだろうか。堀田はあれからどうしただろうか。笠原はまだどこかで飲んでるだろうか。それから誰それは……。誰それは……。それらの影像が、霧を通してのように、現われては消え、消えては現われる。