Japanische Klassiker mit Furigana
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あいのごとく
愛のごとく
山川 方夫
Lesen Sie 愛のごとく (あいのごとく) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.908 Zeichen · 210 Bildschirme
彼は大きく肩で呼吸をして、生真面目な顔で喘ぎながらいった。「こ、これ。あんたの名刺入れ。机に、忘れとった。あんたが、あんまり早よう、歩きよるんでのう」
私は感謝し、名刺入れをポケットにおさめた。下着までが濡れたのか、関節にへばりついた布地が重たかった。警官は、ふいに私の顔をのぞきこんだ。
「なんだ? あんた、泣いとるんか?」
私はあわてて首をふった。私はけっして泣いていたのではなかった。善良な警官が私の顔のどこに涙をみつけたのか。ただ、私には朝の光がまぶしかった。
バスは陸橋の手前を左に折れ、幅のひろい道路に出た。バスの内部には斜めからの弱まった光線が移動し、中央で二つに割れる扉がひらくごとに、埃っぽい風がなまぬるく流れ入った。保井真理子の告別式から、まる二日たった夕方ちかくだった。その日は一日じゅうむしあつく曇った天気だった。
冬ズボンの膝の上に、原稿のはいった紙袋がのせてあった。私はまた放送局に出向かねばならなかった。告別式の日、あるプロデューサーが私にそれを依頼したのだ。私はなんでも屋で、いわば守備の巧い選手だ。ヒットも打たぬかわりに、穴もあけない。