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Japanische Klassiker mit Furigana

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あいのごとく

愛のごとく

山川 方夫

Lesen Sie 愛のごとく (あいのごとく) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.908 Zeichen · 210 Bildschirme

Aozora Bunko

彼女がたった一人だったこと、そして殺風景な深夜の道をたどって行くということ、それがうれしいような、かなしいような気がしていた。信二は突然に気づいた。彼のかくされた肌が、ひりひりとするような寒風にあたっていた。十七歳の彼は子供だった。彼はひとつも少年を脱していたのではなかった。彼はその海岸の暗い道を、姉のような黒い服の女と二人きりで、手をつないでどこまでも歩いて行きたかった。冬の闇のなかへ消えて行きたかった。

その夜は町でカマクラに行くのだという中尉がのりこみ、近道をしようとしてバスは小さな道に紛れこんだ。やけくそな運転手が飛ばしたので木の枝が窓を破り、アルト・サックスの青木が頭を切った。バスは三時すぎまで横浜に着くことができなかった。

信二は、生活とはひとつのくりかえしではないのかと思った。多かれすくなかれ、人びとはくりかえしによって生きるものだ。ドラムをたたくバンド・ボーイとしての生活が、彼にうまれていた。彼は、次第に慣れて行く自分を感じとれた。

あくどい原色にいろどられた狂騒的なざわめき、汗と血、パンパンや兵士たちのがさつでなまなましいざわめきなど、彼は憎んだり苦しんだりする、無力でしかも貧しい現実に背を向けようとしていた。