Japanische Klassiker mit Furigana
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ばしゃ
愛の挨拶・馬車・純粋小説論
横光 利一
Lesen Sie 愛の挨拶・馬車・純粋小説論 (ばしゃ) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 40.699 Zeichen · 78 Bildschirme
た。けれども、またそうなると、一方今度は内心面白いことばかりを探ろうとするために、あれやこれやと過去の記憶をひっかき廻し、その度に逆に不愉快な記憶をだんだん多くひっかけて来るのを感じると、由良も思わずまた花江親子の不幸な身の上に気がついて、それは一時も早くここを切り上げなければ、いまにこの親子は、あまりの沢山な自分達の過去の不幸に気がついて、わッと泣き出してしまうかもしれないと、そんな細いことにまで気が廻っていらいらとし始めた。
「では、先生、僕は今夜はこれからまだ湯へ這入らなければなりませんから、失礼させて貰います。」
由良は話の途切れたとき学者と娘にそう云って外へ出て来た。そのときは、もう外は真暗になっていたが、月の光で足もとは充分にはっきりと見えていたので、由良は家へはもどらず、そのまま湯の方へ手拭を肩にひっかけて登っていった。しかし、彼はその坂道を歩きながらも、花江の笑顔の華やかさにひき較べて、彼女が笑いをひそめる刹那の陰鬱な表情を思いうかべると急に心が凍るように冷くなった。恐らく学者も人の父であってみれば、どんなに狂ったことがあるとはいえ、娘を見れば、絶えず娘が誰かと結婚してくれれば良いと思わぬことはなかったであろう。