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Japanische Klassiker mit Furigana

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ばしゃ

愛の挨拶・馬車・純粋小説論

横光 利一

Lesen Sie 愛の挨拶・馬車・純粋小説論 (ばしゃ) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 40.699 Zeichen · 78 Bildschirme

Aozora Bunko

それにあたりは森閑として何の物音一つ聞えず、ただ月光だけが明るく降り注いでいるのであるから、自然に由良もがぼりとも湯の音を立てず、その男が動き出せばこちらもと堅く手を握って湯の中で身構えずにはいられなかった。けれども、そういつまでも向うが動かないと、もうそれでは人ではなかったのだと思ってしまって、しまいには由良もがっかりしたように馬鹿馬鹿しくなった。しかし、ふと、もしこれがいつも此の湯へ来る狂人なら、こちらをかまわずもっと動くにちがいないのに、それに動かずにほとんどそうして隠れるようにしているところを見ると、これはひょっとすると、夢殿村から脱け出て来た患者がこっそり人目を忍んで湯にひたっているのにちがいないと思い出した。すると、その判断がどうやら一番正しいように思えて来たと同時に、きょう出た自分の卦の中の「水」という字の中には、水難の意味のあることまで思いあたって、これはこのままじっとしていれば何事が起るかもしれないと思ったので、由良は急いで湯の中から這い上った。そうして彼は着物をひっかけるように着てから帯を締め締め、俺の八卦もこれはだんだん当るようになって来たぞと、何となく恐ろしく感じながら坂道へ出ようとすると、石の間から、湯につかっていた患者のものであろう、脱ぎ捨てた着物の一端がちょろりと尾のように