Japanische Klassiker mit Furigana
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ばしゃ
愛の挨拶・馬車・純粋小説論
横光 利一
Lesen Sie 愛の挨拶・馬車・純粋小説論 (ばしゃ) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 40.699 Zeichen · 78 Bildschirme
由良はだんだん何とも知れない底深い恐れを感じて来ると、持っていた筮竹を押入の中に押し込んでそのまま寝てしまったが、寝るまえに頭に浮べていた花江の姿は、その日聞いた夢殿村の刺戟の強い話のせいでもあろう、彼がすっかり眠ってしまっても、まだ由良の眠りの中へひっきりなしに現れて来始めた。そればかりか、眼を醒していたときの花江とはちがって、眠っていると頭の病いに襲われてからの特長である夢が、生き生きと色も匂いも失わずに花江の姿を浮べて来るのだ。そうなると、由良も起きているときよりも眠っているときの方が楽しみなことは楽しみであるが、ときどき草むらの中を歩いている花江の足に、べっとりと濡れた皮膚のひっついた着物がからんで来たり、それを下駄で踏みつけてとろうとする由良の足へ、その着物が今度はへばりついて来て放れなかったりして、由良も思わず汗をかいて眼を醒した。しかし、夜がしらじら明ける頃になると、もう夜が間もなく明けるのだと由良は思いながらも、まだ花江の姿がきれぎれに夢の中に浮んで来て、そんなに早く夜が明けては困るのにと、そわそわ眠りながらし出すほど由良はいつの間にか花江としたしくなってしまった。