Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わがやのらくえん

我が家の楽園

久生 十蘭

Lesen Sie 我が家の楽園 (わがやのらくえん) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 90.195 Zeichen · 175 Bildschirme

Aozora Bunko

そのうちに、ぽっかり眼をあき、枕元に背の高いひとが二人も坐っているのを見ると、巣鴨の監房の中だと勘ちがいしたらしく、

「寝たままで、失礼いたします。お取り調べは、今日でしょうか」

と頓狂な挨拶をし、見舞いにきていた人々を失笑させた。担当の医者は、

「ここは巣鴨ではないから、ご心配なく……あなたは脳溢血で倒れたので、いま、病院にいるのです」

と説明し、血斑のありかを地図のように書いてみせた。

祖父は一と月ほどしてから麻布の家へ帰ったが、家屋収用を戦犯逮捕と勘ちがいして、恐怖のあまり卒倒し、アメリカの注射で助かったいきさつは、すぐ、みなに知れた。

「ここは巣鴨ですか」には、笑わぬものはなく、石田は見かけ倒しの臆病ものだということになって、それ以来、訪ねてくるものもなくなった。

祖父は長い間の習慣で、毎日、客間に坐って、誰か来るのを待っているので、それとなく家扶が注意したが、長年、お追従とおべんちゃらに馴らされてマイルドになった頭には、なんのことやら、よくのみこめないふうだった。

洋館の客間の暖炉棚に載っているスイス製の千日捲きの置時計は、むかしは祖父の自慢のものだったが、よほど前から動かなくなり、丸い玻璃鐘の中で赤く錆びついていた。