Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんな
或る女
有島 武郎
Lesen Sie 或る女 (あるおんな) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.981 Zeichen · 295 Bildschirme
葉子はそれでも船室を出ようとはしなかった。生まれてから始めて孤独に身を置いたような彼女は、子供のようにそれが楽しみたかったし、また船中で顔見知りのだれかれができる前に、これまでの事、これからの事を心にしめて考えてもみたいとも思った。しかし葉子が三日の間船室に引きこもり続けた心持ちには、もう少し違ったものもあった。葉子は自分が船客たちから激しい好奇の目で見られようとしているのを知っていた。立役は幕明きから舞台に出ているものではない。観客が待ちに待って、待ちくたぶれそうになった時分に、しずしずと乗り出して、舞台の空気を思うさま動かさねばならぬのだ。葉子の胸の中にはこんなずるがしこいいたずらな心も潜んでいたのだ。
三日目の朝電燈が百合の花のしぼむように消えるころ葉子はふと深い眠りから蒸し暑さを覚えて目をさました。スティームの通って来るラディエターから、真空になった管の中に蒸汽の冷えたしたたりが落ちて立てる激しい響きが聞こえて、部屋の中は軽く汗ばむほど暖まっていた。三日の間狭い部屋の中ばかりにいてすわり疲れ寝疲れのした葉子は、狭苦しい寝台の中に窮屈に寝ちぢまった自分を見いだすと、下になった半身に軽いしびれを覚えて、からだを仰向けにした。