Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あるおんな

或る女

有島 武郎

Lesen Sie 或る女 (あるおんな) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.981 Zeichen · 295 Bildschirme

Aozora Bunko

もう昼ごろだなと気が付く中にも、雷とも思われる叫喚が船を震わして響き渡っていた。葉子はこの瞬間の不思議に胸をどきつかせながら聞き耳を立てた。船のおののきとも自分のおののきとも知れぬ震動が葉子の五体を木の葉のようにもてあそんだ。しばらくしてその叫喚がややしずまったので、葉子はようやく、横浜を出て以来絶えて用いられなかった汽笛の声である事を悟った。検疫所が近づいたのだなと思って、襟もとをかき合わせながら、静かにソファの上に膝を立てて、眼窓から外面をのぞいて見た。けさまでは雨雲に閉じられていた空も見違えるようにからっと晴れ渡って、紺青の色の日の光のために奥深く輝いていた。松が自然に美しく配置されて生え茂った岩がかった岸がすぐ目の先に見えて、海はいかにも入り江らしく可憐なさざ波をつらね、その上を絵島丸は機関の動悸を打ちながら徐かに走っていた。幾日の荒々しい海路からここに来て見ると、さすがにそこには人間の隠れ場らしい静かさがあった。

岸の奥まった所に白い壁の小さな家屋が見られた。そのかたわらには英国の国旗が微風にあおられて青空の中に動いていた。「あれが検疫官のいる所なのだ」