Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あるおんな

或る女

有島 武郎

Lesen Sie 或る女 (あるおんな) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.981 Zeichen · 295 Bildschirme

Aozora Bunko

そして昼近くなってちょっとした岬をくるりと船がかわすと、やがてポート・タウンセンドに着いた。そこでは米国官憲の検査が型ばかりあるのだ。くずした崕の土で埋め立てをして造った、桟橋まで小さな漁村で、四角な箱に窓を明けたような、生々しい一色のペンキで塗り立てた二三階建ての家並みが、けわしい斜面に沿うて、高く低く立ち連なって、岡の上には水上げの風車が、青空に白い羽根をゆるゆる動かしながら、かったんこっとんとのんきらしく音を立てて回っていた。鴎が群れをなして猫に似た声でなきながら、船のまわりを水に近くのどかに飛び回るのを見るのも、葉子には絶えて久しい物珍しさだった。飴屋の呼び売りのような声さえ町のほうから聞こえて来た。葉子はチャート・ルームの壁にもたれかかって、ぽかぽかとさす秋の日の光を頭から浴びながら、静かな恵み深い心で、この小さな町の小さな生活の姿をながめやった。そして十四日の航海の間に、いつのまにか海の心を心としていたのに気がついた。放埒な、移り気な、想像も及ばぬパッションにのたうち回ってうめき悩むあの大海原――葉子は失われた楽園を慕い望むイヴのように、静かに小さくうねる水の皺を見やりながら、はるかな海の上の旅路を思いやった。