Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんな
或る女
有島 武郎
Lesen Sie 或る女 (あるおんな) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.981 Zeichen · 295 Bildschirme
五年たっても昔のままの構えで、まばらにさし代えた屋根板と、めっきり延びた垣添いの桐の木とが目立つばかりだった。砂きしみのする格子戸をあけて、帯前を整えながら出て来た柔和な細君と顔を合わせた時は、さすがに懐旧の情が二人の胸を騒がせた。細君は思わず知らず「まあどうぞ」といったが、その瞬間にはっとためらったような様子になって、急いで内田の書斎にはいって行った。しばらくすると嘆息しながら物をいうような内田の声が途切れ途切れに聞こえた。「上げるのは勝手だがおれが会う事はないじゃないか」といったかと思うと、はげしい音を立てて読みさしの書物をぱたんと閉じる音がした。葉子は自分の爪先を見つめながら下くちびるをかんでいた。
やがて細君がおどおどしながら立ち現われて、まずと葉子を茶の間に招じ入れた。それと入れ代わりに、書斎では内田が椅子を離れた音がして、やがて内田はずかずかと格子戸をあけて出て行ってしまった。
葉子は思わずふらふらッと立ち上がろうとするのを、何気ない顔でじっとこらえた。せめては雷のような激しいその怒りの声に打たれたかった。あわよくば自分も思いきりいいたい事をいってのけたかった。