Japanische Klassiker mit Furigana
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あるしょうじょのしまで
或る少女の死まで 他二篇
室生 犀星
Lesen Sie 或る少女の死まで 他二篇 (あるしょうじょのしまで) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.554 Zeichen · 228 Bildschirme
わたし一番すきなのは、うさぎよ。あの赤い目が一番すき。」と言った。少女らしいことをいう。
「一番きらいなのは――。」
「火喰鳥ってのがいたのでしょう。あれは一番きらいなの。」
私だちは公園から谷中の通りへ出た。
「ふじ子さんはいつお国へかえるんですか。」
「まだ分らないの。けどもうすぐだわ。あなたはずっとあすこの家にいるのでしょう。」
「たぶんいるでしょう。」
「越しちゃつまらないわね。わたし、鹿児島へ行ったらてがみを上げますわ。ほんとよ。」
「きっと下さい。私も出しますから。」
「ええ。きっとよ。そして、一年ばかり経つとまた東京へこんどはお父様もみな一緒に出てくるの。」
「そりゃいいね。」
「そのころは根津へ電車が通るようになるでしょうね。」
「来年できるんだから、きっと通るでしょう。」
私らは坂から根津一帯の谷間の町の見えるところに立って、夕方近い混雑された、物売の呼び声の寂しく起ってくるのに耳をすました。それらの町の家家から漂う煙は、低く這うて殊に凡てを物悲しく沈ませて見せた。
この少女があの家からいなくなることは、私にとって友を失うような、あいてが小さく可憐なだけ寂しさも一層深いような気がした。