Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
あるおとこのしゅき
或る男の手記
豊島 与志雄
Lesen Sie 或る男の手記 (あるおとこのしゅき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 43.279 Zeichen · 86 Bildschirme
光子を平気で井ノ頭まで連れ出したのも、右のような持論を持ってるからだった。所が、光子からああいう話を聞き、次に自由奔放な彼女の魂を見、最後に家庭なんかの煩いを離れた伸々とした気持になって、私の心の中には別なものが頭をもたげてきた。それが更に、酒を飲んでるうちに光子の眼付から度々そそられた。そして、前にはただ「何だかごたごたして」とだけ書いたが、このごたごたのうちに私は意を決したのである。前日来のことで絶望して苛立ってる奔放な光子を見、その挑みかかるような眼付を見て――だが彼女がどういう心持だったかは私にはよく分らない、彼女自身にも恐らく分っていないだろう、実際その場の空気はごたごたしていたから……でもその間に、私は彼女を対象として自分をためしてみようと思ったのである。そしてそれは、性慾を蔑視する平素の持論にも矛盾しなかった。
そういう風にして凡ての調子が狂っていった。光子も私の気持を無意識的に感じて、更に絶望的に苛立っていったらしい。
呪わしい一夜だった。
私達は飯も食べずに、七時頃その家を飛び出した。朝靄が靉いて、地面はしっとりと露に濡れていた。