Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

あるおとこのしゅき

或る男の手記

豊島 与志雄

Lesen Sie 或る男の手記 (あるおとこのしゅき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 43.279 Zeichen · 86 Bildschirme

Aozora Bunko

真剣だとも皮肉だともつかないその調子に、私は遠くへ突き離された気がした。そして両手で頭を押えながら、それでもなお縋りついてゆこうとした。

「どうすることも、僕にはどうすることも出来ない。ただお前が何とか云ってさえくれれば……。」

彼女は黙っていた。

「いろんなことがさし迫ってるのだ。……もう何もかも云ってしまおう。実は昨晩松本君が来て、すっかり打明けてから、お前を僕の家へ引取っておいて暫く交際さしてくれと、そう云うのだ。そして結局、俊子が今日お前の所へ行って、お前の心をよく聞いた上で……ということになっている。午後には行くだろう。それで僕は……。」

「え!」彼女は声を立てた。「奥さんが私の所へ?」

彼女の喫驚した様子に私は眼を見張った。

「本当?」

「本当だとも。だから僕は……。」

私は云いかけて止した。彼女はふいに飛び上ろうとしたが、それをじっと押しこらえるような表情をして、頬をぴくぴく痙攣さした。それから突然顔色を変えて、その引きつったままの口元に、嘲るような影を浮べて、いきなり病的に笑い声を立てた。

「いらっしゃるがいいわ。昼間よりか、晩にでも、そして……河野さんの所へでもいらっしゃるがいいわ。