Japanische Klassiker mit Furigana
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あるひのおおいしくらのすけ
或日の大石内蔵助
Lesen Sie 或日の大石内蔵助 (あるひのおおいしくらのすけ) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.830 Zeichen · 18 Bildschirme
煙は、早春の午後をわずかにくゆらせながら、明い静かさの中に、うす青く消えてしまう。
「こう云うのどかな日を送る事があろうとは、お互に思いがけなかった事ですからな。」
「さようでございます。手前も二度と、春に逢おうなどとは、夢にも存じませんでした。」
「我々は、よくよく運のよいものと見えますな。」
二人は、満足そうに、眼で笑い合った。――もしこの時、良雄の後の障子に、影法師が一つ映らなかったなら、そうして、その影法師が、障子の引手へ手をかけると共に消えて、その代りに、早水藤左衛門の逞しい姿が、座敷の中へはいって来なかったなら、良雄はいつまでも、快い春の日の暖さを、その誇らかな満足の情と共に、味わう事が出来たのであろう。が、現実は、血色の良い藤左衛門の両頬に浮んでいる、ゆたかな微笑と共に、遠慮なく二人の間へはいって来た。が、彼等は、勿論それには気がつかない。
「大分下の間は、賑かなようですな。」
忠左衛門は、こう云いながら、また煙草を一服吸いつけた。
「今日の当番は、伝右衛門殿ですから、それで余計話がはずむのでしょう。片岡なども、今し方あちらへ参って、そのまま坐りこんでしまいました。