Japanische Klassiker mit Furigana
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あるひのおおいしくらのすけ
或日の大石内蔵助
Lesen Sie 或日の大石内蔵助 (あるひのおおいしくらのすけ) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.830 Zeichen · 18 Bildschirme
」
「道理こそ、遅いと思いましたよ。」
忠左衛門は、煙にむせて、苦しそうに笑った。すると、頻に筆を走らせていた小野寺十内が、何かと思った気色で、ちょいと顔をあげたが、すぐまた眼を紙へ落して、せっせとあとを書き始める。これは恐らく、京都の妻女へ送る消息でも、認めていたものであろう。――内蔵助も、眦の皺を深くして、笑いながら、
「何か面白い話でもありましたか。」
「いえ。不相変の無駄話ばかりでございます。もっとも先刻、近松が甚三郎の話を致した時には、伝右衛門殿なぞも、眼に涙をためて、聞いて居られましたが、そのほかは――いや、そう云えば、面白い話がございました。我々が吉良殿を討取って以来、江戸中に何かと仇討じみた事が流行るそうでございます。」
「ははあ、それは思いもよりませんな。」
忠左衛門は、けげんな顔をして、藤左衛門を見た。相手は、この話をして聞かせるのが、何故か非常に得意らしい。
「今も似よりの話を二つ三つ聞いて来ましたが、中でも可笑しかったのは、南八丁堀の湊町辺にあった話です。何でも事の起りは、あの界隈の米屋の亭主が、風呂屋で、隣同志の紺屋の職人と喧嘩をしたのですな。