Japanische Klassiker mit Furigana
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あるひのおおいしくらのすけ
或日の大石内蔵助
Lesen Sie 或日の大石内蔵助 (あるひのおおいしくらのすけ) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.830 Zeichen · 18 Bildschirme
どうせ起りは、湯がはねかったとか何とか云う、つまらない事からなのでしょう。そうして、その揚句に米屋の亭主の方が、紺屋の職人に桶で散々撲られたのだそうです。すると、米屋の丁稚が一人、それを遺恨に思って、暮方その職人の外へ出る所を待伏せて、いきなり鉤を向うの肩へ打ちこんだと云うじゃありませんか。それも「主人の讐、思い知れ」と云いながら、やったのだそうです。……」
藤左衛門は、手真似をしながら、笑い笑い、こう云った。
「それはまた乱暴至極ですな。」
「職人の方は、大怪我をしたようです。それでも、近所の評判は、その丁稚の方が好いと云うのだから、不思議でしょう。そのほかまだその通町三丁目にも一つ、新麹町の二丁目にも一つ、それから、もう一つはどこでしたかな。とにかく、諸方にあるそうです。それが皆、我々の真似だそうだから、可笑しいじゃありませんか。」
藤左衛門と忠左衛門とは、顔を見合せて、笑った。復讐の挙が江戸の人心に与えた影響を耳にするのは、どんな些事にしても、快いに相違ない。ただ一人内蔵助だけは、僅に額へ手を加えたまま、つまらなそうな顔をして、黙っている。――藤左衛門の話は、彼の心の満足に、かすかながら妙な曇りを落させた。