Japanische Klassiker mit Furigana
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おしえのきせき
押絵の奇蹟
夢野 久作
Lesen Sie 押絵の奇蹟 (おしえのきせき) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 58.749 Zeichen · 114 Bildschirme
私もすぐにあとから追っかけて参いりましたが不思議なことにお母様は、いつの間にか青い顔におなりになって、台所の上り口に腰をかけてシクシク泣いておいでになりましたので私もビックリしました。そうしてどうなすったのかと思ってお傍へ行ってお顔を覗き込みますと、お母様はもう大きくなっている私の身体を赤ん坊のように抱き寄せて、私の鼻のお化粧を鼻紙でお直しになりながら、
「私は錦絵さえいただけばお金なんか要らんのに、お父様はいつまでも慾の深いことばかり仰有って………」
と、さも口惜しそうに唇を噛んでホロホロと涙をお流しになりました。その時にお座敷の方から、お父様と柴忠さんの大きな笑い声が聞こえて来ましたので、私も急に悲しくなりましてお母様と抱き合って泣いたことを記憶えております。
それから何日か経ちますと東京から大きなお菓子の箱みたようなものが、お母様のお名前で送って来ましたから、お父様が釘抜きと金槌で開いて御覧になるとどうでしょう。その中には錦絵が一パイに詰まっているのでは御座いませんか。
「まあ……これ……みんな絵ばかり……」
と仰有って真青になったまま口紅の処を押えておいでになるお母様の小指がワナワナとふるえていたのを私はハッキリとおぼえております。