Japanische Klassiker mit Furigana
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せっぷん
接吻
江戸川 乱歩
Lesen Sie 接吻 (せっぷん) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.279 Zeichen · 13 Bildschirme
ソッと二三畳あと帰りをすると、今度はドシドシと畳ざわりも荒々しく、ガラリと間の障子を引開けて、
「オイ、今帰った」
何故出迎えないのだと云わぬばかりに、そこの長火鉢の向う側へドッカリ坐ったことである。
「アラッ」
一声叫ぶやいなや、手に持っていた写真をいきなり帯の間へ隠すと、お花は、赤くなったり、青くなったり、へどもどしながら、でも、やっと気を沈めて、
「まあ、私、ちっとも存じませんで、ご免なさいまし」
そのいやにしとやかな口の利き方からして、食わせものだ。宗三、そう思った。それに、あの写真を隠した所を見ると、テッキリそうと極った。障子を開けるまでは、若しや自分の写真ではあるまいか、と、一方では大いに自惚てもいたのだが、写真を隠して青くなった様子では、無論自分のではない。きっと、彼奴の写真に相違ない。あの課長の村山面の。
と、宗三が疑念を抱くには、抱く丈の理由があった。
新妻のお花は課長村山の遠縁の者で、長らく彼の家に寄寓していたのを、縁あって宗三が貰い受たのだ。媒酌はいうまでもなく課長さんである。課長さんといっても、年輩は宗三とさして違わぬ年若だし、奥さんはあっても、評判の不緻縹もの、疑い出せば、何が何だか知れたものではないのである。