Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ほうろうさっかのぼうけん

放浪作家の冒険

西尾 正

Lesen Sie 放浪作家の冒険 (ほうろうさっかのぼうけん) von 西尾 正 (にしおただし) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.694 Zeichen · 33 Bildschirme

Aozora Bunko

表に文化の花のほこらしげに爛漫とさきにぎわえば、賑わうほど、裏側にはどぶどろや塵埃やかすが、人目をさけてひとつところによどんでしまう。表通りはふつうの薬局や八百物屋や雑貨店などのせわしげにたちならぶ商店街だが、その商店と商店との間にもうけられたほそい路地へ一歩はいりこむと、そこはもう別世界だ。そこがそれ、君だって先刻御承知のところだろう。

着いたらすでに夜もおそく、どうしたわけかばかに不景気だ。なにしろ、めずらしい寒さではあるし、もうそんな遊び場に夢をもつような男はいなくなったのだろう、いっときのようにひやかしもながれていず、お茶っぴきがあっちの窓こっちの戸口にうろうろしていて、職業の情熱もうしなったように、煙草のけむを輪にふきながら、へんにものかなしい亡命的な小唄を口吟んでいたり、下水にむかってへどをはいているという始末……。かたい、こちこちの木煉瓦の路地をあるくおれの靴音がこつんこつんとひびいて、その気配に売れのこりが、ちょいとちょいと、とよびかけるのだが、その声がまたぶきみなほど婬惨で、なさけないくらいの栄養不良ぶりだ。

そういう女たちを尻目にかけ、それとなく左右に眼をくばりながらあるいてゆくおれの足が、こつんとそれきり、ある小さな飲み屋ふうの家の戸口のところでとまってしまった。