Japanische Klassiker mit Furigana
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ほうろうさっかのぼうけん
放浪作家の冒険
西尾 正
Lesen Sie 放浪作家の冒険 (ほうろうさっかのぼうけん) von 西尾 正 (にしおただし) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.694 Zeichen · 33 Bildschirme
その家のまえにたってじっとおれの近づくのをまっている女が、なんと日本娘じゃないか。毛皮ではあったが、もはやところどころの抜けおちたみすぼらしい黒外套に、ふちのみじかい真赤な帽を真黒なふさふさした、眉のかくれるくらいまでにあふれた髪のうえにかるがるとのせて、両手をポケットに奥ぶかくいれ、足をかさねて入口のドアによりかかっているすがたが、青オい電燈の灯をあび、さそうような幽艷さをたたえていた。日本の女がよその国へきてこういう種類の女になるということにべつだん不思議はないし、センチメンタルになるほどおれも若くはないが、なにかのはずみで米のめしがくいたくなるように、産毛のはえていない肉のしまった肌や黒い眼黒い髪がとつぜん恋しくなる時があるものだ。売れのこりだからいずれにしても美人じゃないし、日本人としてもとくに鼻もひくく眼もほそすぎ、どこにでもころがっている下らぬ女には相違ないのだが、おしろいけのない、一見しろうと女にもみえる、そのみじまいの無雑作なところが、ちぢらし髪やどくどくしい口紅やいたずらに Actif な紅毛女のエキゾティシズムにはあきあきしている矢先とて、柄にもなく日本へのノスタルジアを感じさせたのだろう。