Japanische Klassiker mit Furigana
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ほうろうさっかのぼうけん
放浪作家の冒険
西尾 正
Lesen Sie 放浪作家の冒険 (ほうろうさっかのぼうけん) von 西尾 正 (にしおただし) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.694 Zeichen · 33 Bildschirme
おれは奇態なほどその女にひきつけられてしまった。おれはなかばこころに決めかけながら、しかし声のわるいのだけはごめんだから、はっきりしたわれわれの言葉で、はなしかけてみた。
「今夜はばかに不景気だな」
すると女は、にこりともせず、ただかさねていた脚をはずしすっくとたちなおるようにして、声だけはつくり声のいくぶんか訴えるような、かなしげな、そのくせ態度は淫売婦どくとくのふてぶてしい人をくった冷淡さをみせて、ささやくような日本語で応じた。
「あら、あんた日本人なのね。うれしいわ」
こうはいうものの少しもうれしそうではないのだ。
「――今夜はこんなに不景気だし、いつまでここにこうしてもいられないから、ね、おねがいするわ、ね」
「まえから、ここにいたのか」
「いいえ、ついさいきん」
「それまでどこにいた」
「ある絵かきさんのモデルをしてたんだけど、いろんなことがあってね、いまじゃこんなところではたらくようになったの」
女はさらに近より真白な両手をだしておれの右手をぎゅっとにぎりひきよせようとした。
「――ね、そんなことどうだっていいじゃないの。こうしてるとこをみつけられると煩さいんだからさ」