Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こきょう

故郷

豊島 与志雄

Lesen Sie 故郷 (こきょう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.738 Zeichen · 8 Bildschirme

Aozora Bunko

秋には、堰の落ちた堀川の淵で、釣やかいぼりをした。柿の木に登って、熟した柿をかじった。冬の雪の日には、高い竹馬に乗って、梢に残ってる蜜柑を取るのが楽しみだった。其他、一々挙げれば際限がない。

然し、そういうことを、私は一体誰と一緒になしたのか。私を甘やかしてくれた父母や大人たち、私が嬉戯した友人たち、それらの人々の印象は、今は朧ろにぼやけている。その代りに、山の峰々、水の流れ、水草の中に群れてる魚、河原の小石、大木の幹、種々の果物、藪影の小さな赤い草の実まで、自然の事物は、実に鮮明な印象を残している。要するに、故郷というものは、私にとっては、自然の事物の中にだけ存在するのである。

それ故、幼年時代を都会の中で――自然の事物に乏しい都会の中で――過ごした人々にとっては、果して如何なる故郷が存在するか、私には疑問である。この疑問を、都会で育った友人に質してみたところ、友人は淋しい顔で答えた、実際、僕たちには故郷は無いに等しいと。そして私達は、故郷というものについてはっきりした感銘を持たぬ者の不幸を語り、人はせめて、田舎の自然のなかで、そしてなるべくは自然美の豊かな処で、幼年時代の一時期なりとも過ごすのが、幸福であろうと、そんなことを話し合ったのであるが……。