Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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いまどぎつね

文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会

小山内 薫

Lesen Sie 文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会 (いまどぎつね) von 小山内 薫 (おさないかおる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.424 Zeichen · 9 Bildschirme

Aozora Bunko

今戸狐

これは狐か狸だろう、矢張、俳優だが、数年以前のこと、今の沢村宗十郎氏の門弟で某という男が、或夏の晩他所からの帰りが大分遅くなったので、折詰を片手にしながら、てくてく馬道の通りを急いでやって来て、さて聖天下の今戸橋のところまで来ると、四辺は一面の出水で、最早如何することも出来ない、車屋と思ったが、あたりには、人の影もない、橋の上も一尺ばかり水が出て、濁水がゴーゴーという音を立てて、隅田川の方へ流込んでいる、致方がないので、衣服の裾を、思うさま絡上げて、何しろこの急流故、流されては一大事と、犬の様に四這になって、折詰は口に銜えながら無我夢中、一生懸命になって、「危険危険」と自分で叫びながら、漸く、向うの橋詰までくると、其処に白い着物を着た男が、一人立っていて盛に笑っているのだ、おかしな奴だと思って不図見ると、交番所の前に立っていた巡査だ、巡査は笑いながら「一体今何をしていたのか」と訊くから、何しろこんな、出水で到底渡れないから、こうして来たのだといいながら、ふと後を振返って見ると、出水どころか、道もからからに乾いて、橋の上も、平時と少しも変りがない、おやッ、こいつは一番やられたわいと、手にした