Japanische Klassiker mit Furigana
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うきふね
文豪怪談傑作選・特別篇 鏡花百物語集
泉 鏡花
Lesen Sie 文豪怪談傑作選・特別篇 鏡花百物語集 (うきふね) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.938 Zeichen · 67 Bildschirme
浮舟
一
一
「浪花江の片葉の蘆の結ぼれかかり――よいやさ。」
と蹌踉として、
「これわいな。……いや、どっこいしょ。」
脱いで提げたる道中笠、一寸左手に持換えて、紺の風呂敷、桐油包、振分けの荷を両方、蝙蝠の憑物めかいて、振落しそうに掛けた肩を、自棄に前に突いて最一つ蹌踉ける。
「……解けてほぐれて逢う事もか。何を言やがる。……此方あ可い加減に溶けそうだ。……まつにかいあるヤンレ夏の雨、かい……とおいでなすったかい。」
さっと沈めた浪の音。磯馴松は一樹、一本、薄い枝に、濃い梢に、一ツずつ、翠、淡紅色、絵のような、旅館、別荘の窓灯を掛連ね、松露が恋に身を焦す、紅提灯ちらほらと、家と家との間を透く、白砂に影を落して、日暮の打水のまだ乾かぬ茶屋の葭簀も青薄、婦の姿もほのめいて、穂に出て招く風情あり。此処は二見の浦づたい。
真夏の夜の暗闇である。この四五日、引続く暑さと云うは、日中は硝子を焼くが如く、嚇と晴れて照着ける、が、夕凪とともに曇よりと、水も空も疲れたように、ぐったりと雲がだらけて、煤色の飴の如く粘々と掻曇って、日が暮れると墨を流し、海の波は漆を畝らす。これでいて今夜も降るまい。