Japanische Klassiker mit Furigana
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うきふね
文豪怪談傑作選・特別篇 鏡花百物語集
泉 鏡花
Lesen Sie 文豪怪談傑作選・特別篇 鏡花百物語集 (うきふね) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.938 Zeichen · 67 Bildschirme
「巽さん。」
「…………」
「あの、風呂番の爺さんは、そのまま小雪さんを負い返して、何しろ、水浸しなんですから、すぐにお座敷へは、とそう思ったんでしょう。一度、あの松に舫った、別荘の船の中へ抱下しましたわね。雫に浜も美しい……小雪さんの裾を長く曳いた姿が、頭髪から濡れてしおしおと舷に腰を掛けました。あの、白いとも、蒼いとも玉のように澄んだ顔。紅も散らない唇から、すぐに、吻と息が出ようと、誰も皆思ったのが、一呼吸の間もなしにバッタリと胴の間へ、島田を崩して倒れたんです。
お浴衣じゃありましたけれど、其処にお帯と一所に。」
と婦は情に堪えないらしく、いま、巽の帯に、片頬を熟と。……一息して、
「貴方のお召ものが脱いで置いてありました。婦の一念……最うそれですもの。……螢はお迎いに行ったんですよ。欄干にかかりました二見ヶ浦の青い波は、沖から、逢いに来たんです。
不便とお思いなさいまし。小雪さんは一言も何にも口へは出さないで、こがれ死をしたんです。
素振、気振が精一杯、心は通わしたでしょうのに、普通の人より、色も、恋も、百層倍、御存じの貴方でいて、些とも汲んでお遣んなさらない!――否、小雪さんの心は、よく私が存じております。