Japanische Klassiker mit Furigana
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うきふね
文豪怪談傑作選・特別篇 鏡花百物語集
泉 鏡花
Lesen Sie 文豪怪談傑作選・特別篇 鏡花百物語集 (うきふね) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 32.938 Zeichen · 67 Bildschirme
何うして、こんな旅籠へ一宿出来よう、服装を見ての口上に違いないから。
「何だ。無価泊めようと云うのじゃねえのか。」
「外を聞いておくんなはれ。」
「指揮は受けねえ。」と肩を揺って、のっさり通る。
「お泊りやす。」
「俺か。」とまたずっと寄る。
「否、違いまんの。」
「状あ見ろ、へへん。」
と、半分白い目で天を仰いで、拗ねたようにそのまま素通。
この辺とて、道者宿、木賃泊りが無いではない。要するに、容子の好い婦人が居て、夕をほの白く道中を招く旅籠では、風体の恁の如き、君を客にはしないのである。
荷も石瓦、古新聞、乃至、懐中は空っぽでも、一度目指した軒を潜って、座敷に足さえ踏掛くれば、銚子を倒し、椀を替え、比目魚だ、鯛だ、と贅を言って、按摩まで取って、ぐっすり寝て、いざ出発の勘定に、五銭の白銅一個持たないでも、彼はびくとも為るのではなかった。
針が一本――魔法でない。
この六でなしの六蔵は、元来腕利きの仕立屋で、女房と世帯を持ち、弟子小僧も使った奴。酒で崩して、賭博を積み、いかさまの目ばかり装った、己の名の旅双六、花の東都を夜遁げして、神奈川宿のはずれから、早や旅銭なしの食いつめもの、旅から旅をうろつくこと既にして三年越。