Japanische Klassiker mit Furigana
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みすじまちかいわい
斎藤茂吉随筆集
斎藤 茂吉
Lesen Sie 斎藤茂吉随筆集 (みすじまちかいわい) von 斎藤 茂吉 (さいとうもきち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.559 Zeichen · 37 Bildschirme
紙幣鶴
ある晩カフェに行くと、一隅の卓に倚ったひとりの娘が、墺太利の千円紙幣でしきりに鶴を折っている。ひとりの娘というても、僕は二度三度その娘と話したことがあった。僕の友と一しょに夕餐をしたこともあった。世の人々は、この娘の素性などをいろいろ穿鑿せぬ方が賢いとおもう。娘の前を通りしなに、僕はちょっと娘と会話をした。
「こんばんは。何している」
「こんばんは。どうです、旨いでしょう」
「なんだ千円札じゃないか。勿体ないことをするね」
「いいえ、ちっとも勿体なかないわ。ごらんなさい、墺太利のお金は、こうやってどんどん飛ぶわ」
そうして娘は口を細め、頬をふくらめて、紙幣で折った鶴をぷうと吹いた。鶴は虚空に舞い上ったが、忽ち牀上に落ちた。
娘は、微笑しながら紙幣で折った鶴を僕に示して、※fliegende oesterreichische Kronen!“こういったのであった。この原語の方が、象徴的で、簡潔で、小癪で、よほどうまいところがある。けれども、これをそのまま日本語に直訳してしまってはやはりいけまい。
この小話は、墺太利のカアル皇帝が、西班牙領の離れ小島で崩じた時と、同じような感銘を僕に与えたとおもうから、ここに書きしるしておこう。