Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 187.841 Zeichen · 376 Bildschirme
その三平は、若い時から敏捷と健脚で仲間のうちでも鳴っていた。どんな山道でも一日に二十里から三十里は歩くという脛を持っていた。
――が、いくら彼でも、そんな速度を毎日は続けきれないのであろう。遠隔から急いで来る時は、馬の使える地帯では馬を用い、嶮路にかかると、自身の脛で飛ぶことにしているらしかった。
そのために、彼は常に往来する要処要処に、「馬継」をする小屋をもっている。多くは猟師の小屋か、木挽小屋などであった。
「おーいッ、炭焼。――この小屋の親爺はおらんか」
三平は今、その馬継らしい炭焼小屋のまえで、馬を降りていた。彼も大汗をかいていたが、彼にも負けないほど、馬も汗にぬれていた。
五月の末である。
山にはいると、まだ緑も浅いが、里のほうはもう、草いきれや蝉の声であった。
「いないのかッ」
面倒になったとみえ、破れ戸の腰を膝で蹴った。小屋の戸はすぐ外れる。
三平は、ここへ預けるつもりの馬を、小屋のなかに曳き込んで、くくりつけると、土間の奥へはいって、勝手に飯櫃や漬物や土瓶などを持ち出した。
そして腹いっぱい喰べ終ると、
「どれ……」
と、すぐ腰をあげかけたが、矢立の筆をぬくと、鼻紙へこう書いて、それを御飯つぶでお櫃のふたへ貼っておいた。