Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 187.841 Zeichen · 376 Bildschirme
それだけでも重任であるのに、藤吉郎は、それだけで甘んじていられなかった。
「半兵衛、もう一度、行ってみてくれい」
「だめです。彼も侍です。たとえそれがしが、百夜通っても、節義を変える武士ではありません」
「そちは、敵に惚れ過ぎている」
「いや、長年の友ですから、彼の心を知っています」
「心の友なら、心をもって、説き伏せられぬこともあるまい」
「が、城門を固く閉じ、何度訪れても、会わないからだめです」
「では、絶望か」
「まず、あの男ばかりは」
「待て待て。およそ絶望ということは、きょうまでおれの生きて来た道にはなかった」
藤吉郎と、その軍師竹中半兵衛とが、帷幕の裡で、こんな密談を交わしていたことがあってから、数日の後であった。
半兵衛の弟竹中久作が、ひとりの旅姿の美人を、馬の背から抱き降ろして、陣中へ導いて来た。
折からその日、垂井の附近で、敵の一小隊と衝突して帰って来た兵たちが、黒い汗を拭いながら、兵糧を頬ばったり、手傷を縛ったりしている中を、時ならぬ花の香りをこぼして、美しい女性が通って行ったので、彼らは大きな眼をして見送った。――もしそれが、半兵衛の妹であり、主君の想い人でなければ、わあアッと、囃し立てて、せめてその袂にでも触れて騒いだかも知れなかった。