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Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 187.841 Zeichen · 376 Bildschirme

Aozora Bunko

「この城ひとつ――」

と、信長は、顎でさして、

「踏みつぶすだんには、なんの造作もないが、お市の身を、怪我なく外に救い出そうと思うと……これは、一国の戦と、信長の煩悩と、ふたつにかかる難事となる。――というて、凡夫信長、そのいずれも捨てかねておる」

「ご無理はありません」

藤吉郎は、頭を垂れた。彼も情痴の所有者である。信長の感情に富むところと、彼のそれとは、理解しあうことができた。

「先頃から――いちど小谷の地形が見たい、案内せよという御内意のあった時も、また、ここを措いて、さきに越前の攻略をお果しなされたのも、そのお悩みによることとは、疾くから拝察しておりました。――口幅たい申し方ですが、てまえから忌憚なくいわせていただくなら、その煩悩こそ、殿のよいところと、人間の至情、何をか、臣下へ御遠慮がありましょう。失礼ながら藤吉郎は、一しおわが殿の御美点を、もひとつ見出したようなここちにござりまする」

「そちだけだ」

信長は、舌打ちして、

「ここへ陣して、旬日をむなしくわしが過しておるを見て――柴田、佐久間、そのほか帷幕の者どもも、解しかねる顔のみしておる。わけて勝家などは、わしが愚かを危ぶみもし、ひそかに嗤うてもおるようだ」