Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 187.841 Zeichen · 376 Bildschirme
見るまに、無数の死体が、火焔の下に捨て去られた。敵は一たまりもなく潰走したのである。逃ぐるを追って、首をあげた者が、彼方此方の野や河原で、声いッぱい、名乗りをさけんでいる。
「追うな、長追いするな」
城中でしきりに呼ばわっているのは留守居の蜂須賀彦右衛門であろう。しかし勢いはとまらなかった。逃げる敵の悲鳴か、追いまくる味方の声か、ごうごうと曠野の闇をふく風のような震撼が、しばし何処ともなく揺るがしていた。
――床几をすえて。
さっきから、ここ清水沢の丘で、戦のもようを眺めていた藤吉郎は、
「よし、片づいたな」
焚火の火でも踏み消させたぐらいな気やすさで、独りうなずいていた。
「於虎。――於市」
「…………」
ふたりの小姓をかえりみて呼んだ。ふたりはすぐ近くに立っていた。けれど、どっちも棒を呑んだように、彼に呼ばれても気づかないふうだった。
「そうもあろう」
藤吉郎は咎めなかった。むしろ微笑をもってその二人をながめた。
ふたりとも、戦というものを、初めて見たにちがいない。眼をまろくして、魂も彼方へとばしている容子に見える。わけて十一歳の虎之助のほうなどは、眉をたて歯をかみあわせ、自分が血のなかで闘っているような顔をして見入っている。