Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.320 Zeichen · 398 Bildschirme
――光秀は、膠着したままの自軍をながめて、
「あら。恥かし!」
と思った。
信長の恩寵を、人いちばい厚くうけている自身を、そこに顧みるほど世上にたいしても、
「かくては名折れ」
と、焦心らずにいられなかった。
悠々と政治軍事の経策に理念をめぐらしている人である時、彼は世間にもざらにない大器であった。いわゆる人材のすぐれたものであった。けれど、その裏面性の感情から衝かれて、ものの思考に入ると、別人のように、みだれやすかった。当面の些事にもひどく拘泥して、明晰な頭脳も、それに支配されてしまう。
かれの聡明と、文化人的なつつましさは、平常の言語行動においては、彼の内部にそんな脆弱な欠陥があることなどは、まったく気ぶりにも他人へ覗かすことはしない。一族近臣にすら窺わせない。ただ彼自身が、自身だけで、
(――こんなことでは)
と、誡めているだけだったから、その胸中の苦悶はまた人いちばいのものであった。
「だめです。あらゆる作戦も、ほとんど城中の敵には、何のこたえもないかのようで。――この上はただ濠を深め、柵をかため、長囲を期して、敵を干乾しにするよりほかには」
と、帷幕の智嚢も、前線の部将も、いまは挙って、それにだけ一致していた。