Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.320 Zeichen · 398 Bildschirme
「なぜか、御坊丸様のお帰りには、さして御喜色もうかがわれぬが」
家臣たちの方が、却って、こんどのことを、慶賀し合ったり、またその欣びの見えぬ信長を、物足らなく、感じたほどだった。
程なく、甲州の使者たちは、満足して還った。信長はそのあとで直ぐ、
「時なるかな時なるかな。ついに待っていた日は近づいた」
と、侍側の腹心に洩らした。
そして、なおいうには、
「甲州の勢いも、はや落日の褪色をあらわして来たではないか。――われから求めもせぬ質子を、送りかえして来たことは、われに寄せる甲州の媚態でなくて何であろうぞ。この一事によって見るも、甲軍の内容に昔日の意気は衰えて来つつあること慥かである」
果然。
彼は、わが子の無事成長を見たことよりも、その一瞬に、甲軍の衰兆を直感して、父として欣ぶこと以上のよろこびを、べつなところに、もっと大きく、ひとり歓喜していたのであった。
使者の歓待に、みずから出て、何かと、胸をひらいて語り合っていたような振舞いも、使者のことばなどから、自己の直感を卜してその確信をつかむためであったことを――後になって、
「ははあ……。そういう御遠謀であったか」