Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.320 Zeichen · 398 Bildschirme
仁科五郎信盛は、なお多門の上にいて、味方の最期を――その一人一人の働きまでを――眼じろぎもせず見とどけていた。
「殿ッ。殿ッ。――いずれにおわすか」
家中の小菅五郎兵衛は、多門の下を駈けめぐっていた。信盛は上から、
「これにおる」
と、健在を知らせ、ようやく近づいたな、そちの顔も見せよ――と下をさし覗いた。
五郎兵衛は、煙の上に、主君の影を仰ぎながら、
「小山田備中どのを始め、お味方の将士、あらましは早お討死です。殿にも、御生害のお支度を遊ばしますように」
と、喘ぎ喘ぎ告げた。
「五郎兵衛、ここへ登って来い。――介錯に」
「はッ。ただ今」
大きく上へ答え、五郎兵衛はよろよろと、多門の階段の方へまわって行ったが、いつまでも楼上へは来なかった。いたずらにそこの梯子口からは、刻々と、濃い煙が昇って来るだけである。
信盛は、べつな狭間の板扉を押して、覗いてみた。もう下に見えるは敵兵ばかりだった。――がただ一人、その大勢の中に奮闘している味方がある。しかも薙刀を持った女性であった。
「あ。諏訪勝左衛門の妻が……」
信盛は、いますぐ死ぬ身なのに、ふと抱いた意外な感を、解こうと努めた。