Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.320 Zeichen · 398 Bildschirme
故郷。
実に、はからずも、彼はこよいを、故郷にすごすのだった。
――後に思いあわせれば、これこそ、産土の導きか、尽きせぬ宿縁か、それとも天が不言のうち、彼の人生の名残を尽させたものだろうか。
こよい四月十九日から、わずか四十余日の後には、本能寺の猛火の中に、その肉体を一塊の灰となしていた信長だったのである。
知らない。知るよしもない。それから四十余日後の身の運命など、もとよりこのときの信長が、思い寄るわけもない。
だが、あだかも彼の霊は、すでにその時からそれを予知していたように、清洲の城のおくつきに詣でては、久しぶりに父信秀の墓前を掃き、そこから暮靄遠く、政秀寺の方を眺めては、
「ああ、爺がいたら」
と、信長の眼に、うたた回顧を起させていた。
まだ少年の頃、老臣の平手中務政秀は、手にもおえぬ少年信長を諫めるため、老腹を切って死んだ。――信長の父信秀から、
(たのむぞ)
といわれた生前の一言を、ついに死をもって尽したのである。
この老臣のことだけは、信長も一生胆に沁みこんでいたとみえ、何かよいことがあるとかならず、
(爺がいたら……)
と、よく口にもらしていた。