Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.320 Zeichen · 398 Bildschirme
「ふたりして、半兵衛の墓へ詣ろう。おゆう、尾いて来い」
秀吉は先に立って、陣屋の裏から山道をたどって、なお小高い一丘の上に登った。
一幹の松がうそ寒い晩秋の風に嘯いていた。その下に、土色もまだ新しい土まんじゅうが盛られてあり、一個の石が、墓標のかわりにすえられてある。
かつては、長陣の徒然に、この松の根がたへ莚をしき、月を賞しながら、官兵衛、半兵衛、秀吉と鼎坐して、古今を談じたこともある。
「…………」
おゆうは、草むらを見まわして手向ける花をさがしていた。
そして、秀吉の次に、土まんじゅうへ向って、額ずいた。
涙はもうこぼれなかった。人の命数を哭き悲しむには、余りに山上の自然は、宇宙の当然な理を、晩秋の草木をもって訓えている。――秋去れば冬、冬去れば春――自然の中には何の悲嘆も涙のたねもない。
「殿さま……」
「何か」
「おねがいがござりまする。兄のお墓を前に折入って」
「そうか。……ウム、そうか」
「おわかりでございましょう……。おそらく、殿さまのお胸には」
「わかっている」
「ゆうに、お暇をくださいまし。……おきき入れ下されば、兄もどんなに地下でほっとすることかと存じまする」