Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.758 Zeichen · 383 Bildschirme
さるにても、御坊塚のこの本陣も昼の一頃にくらべると、何と、寥々たる松風の声ばかりではあると、彼は、憮然として見まわした。
ゆるい傾斜の下は、畑と野面へつづいている。東は久我畷、北は山岳、西は円明寺川まで一眸の戦場もいまは青い星のまたたきと、一色の闇のみであった。
申の刻から酉の下刻まで、わずかまだ一刻半(三時間)のあいだでしかない。野に満ちていた味方の旗幟は、いずれへ潰え去ったのか。
――誰も討死しました。誰も敵の中で相果てました。誰も誰もと、相次いで報じて来る味方の名を、彼は胸に留めきれないほどここで聞いた。
一刻半の間にである。
今も、堀与次郎が、その悲報の上にまた一つの悲報を受け取ったにちがいない。
けれど彼ももうそれを光秀の耳へ取次ぐ勇気を失っているのであろう。――光秀に叱られて、ふたたび丘の下へ立ちに行ったが、見ていると、力なげに松の幹へ鎧の背を凭せかけて、黙然、星を仰いでいる。
「――何者だッ」
その与次郎は、ふいに、杖としていた槍を持ち直して、彼方の闇に馬を止めた者へどなった。
「お味方だ。お味方だ……」
息を喘ぎながら此方へ登って来る影は、その足つきから見ても、明らかに傷を負っている。