Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.758 Zeichen · 383 Bildschirme
寧子は内陣の陰で、燭に燧石を磨っていたし、老母のすがたはただ一つ暮れ残ったもののように、聖観音の下にじっと祈りの姿をつづけている。
非常な迅さで来る跫音がそのとき外の方に聞えた。少なくも十名足らずの武者らしい。老母ははっとしたように振り向いた。寧子も御堂の縁へ出て立った。
「――殿がこれへお出でになりますッ。間もなく殿が見えられますッ」
境内中へひびけとばかり呼ばわるほどな声だった。毎日、二里ほど先の下流まで見張りに出ている哨兵の者たちである。みなのめるような姿勢をして、傾いた山門を駈けこんで来たものだったが、とたんに彼方の濡縁に寧子のすがたを見たので、そこまで寄る間も惜しい気もちで、みな口々にそこから叫んでしまったのであった。
「お供には、御家中の誰彼をひきつれ、およそ五十騎ほどで、お休みもなくこれへお急ぎ中です」
「殿をはじめ、供の衆も、みなすばらしいお元気で」
「とこうする間に、すぐお着きになりましょう。夢かのようですが、夢ではありません。まさに、中国から攻めのぼられて来たわが殿です」
かかる声々は、濡縁の前を去って、やがてまた、狭い寺中はおろか、裏の武者小屋から、部落の家々にまで伝わって行ったが、その伝わることの迅さは、たちまち大吉寺を中心に、野瀬の部落全体から、何ともいえない声が、わあッと一斉にわき