Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.758 Zeichen · 383 Bildschirme

Aozora Bunko

隣地の寺坊の方にはなお、年長けた部将たちが兵と共にいたが、その中のひとり加藤光泰がこれへ来て、

「殿は、どちらに?」

と、さがしぬいていた。

裏の風呂場と分って、光泰は廻って行ったが、豪家といっても、田舎家のことである。板屋根の、それも壁も羽目もない吹きぬきに桶風呂一つすえてある所に、秀吉の首が、湯気の中に浮いている。

「――作内光泰にござります。何か、急に来いとの仰せの由、憚らずに参りましたが」

湯の流れてくる垣の元にひざまずいた。

「作内か」

と、秀吉は見て、

「寺内の者どもは、今ごろ飯をくうておるらしいが、なぜ晩いのか」

と、訊ねた。

光泰は答えて、

「城中に万一の変もあらばと、きょう一日中、みな案じておりましたので、殿の御無事なお帰りを知って、初めて炊煙をあげ出したわけにございまする」

「無用無用」

秀吉は湯から出て、小姓の石田佐吉に背中を洗わせながら、

「兵どもに、いらざる苦労をさせるお汝らは、ちと拙ないぞ」

「はっ」

「兵には早う飯をとらせ、馬にも充分飼糧をくれて、こよいは早目に眠らせておけ。――火の用心ぬかるな。時ならぬ沙汰あるも、すぐ打ち立てる心しておけや」