Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.758 Zeichen · 383 Bildschirme
と、すすめ、末近左衛門にも、難波七郎次郎にも、杯をまわして、順に酌み交わした。
「久しゅう、かような美酒もいただかなんだせいか、はやちと微酔うてござる。――無骨者の余芸、おかしゅうお眺めあらんも、一さし舞うて堀尾どのへお目にかけん。――兄者人。左衛門。鼓はなけれど、手拍子、膝拍子。いつもの曲舞の一節、共々に謡われよ」
宗治は、小舟の上に起って、さっと白扇をひらいた。そして日頃の一つ芸、誓願寺の曲を舞った。
舟がやや揺れる。波がやや立ちさわぐ。――高松の城中にある五千の人のこれは涙か。はるか彼方の山々や岸にある三万将士のこれは感動の波か。――眼のあたり近々といた堀尾茂助吉晴は、正視するを得ず思わず頭を垂れていた……。
と。――謡声がやんだと思うとすぐであった。
「堀尾どの。確とお見届けおかれよ」
先方からいわれて、はっと顔を上げると、宗治はもう坐り直して、腹一文字に切っていた。
「市之丞。介錯」
促す声は凄愴を呼んだ。凜々、血は舟中を紅にしている。
「弟よ。わしもゆくぞ」
すぐ、兄の月清も屠腹した。さらばと、末近左衛門もつづいて自刃した。
また、検使に首桶を渡して帰ると、郎党の七郎次郎も、介錯人の市之丞も、主人に殉じてともに後を追った。