Japanische Klassiker mit Furigana
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しんじゅのことば
新樹の言葉
Lesen Sie 新樹の言葉 (しんじゅのことば) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 29.156 Zeichen · 59 Bildschirme
いろいろの本を読んで聞かせて、片時も、私を手放さなかった。六歳、のころと思う。つるは私を、村の小学校に連れていって、たしか三年級の教室の、うしろにひとつ空いていた机に坐らせ、授業を受けさせた。読方は、できた。なんでもなく、できた。けれども、算術の時間になって、私は泣いた。ちっとも、なんにも、できないのである。つるも、残念であったにちがいない。私は、そのときは、つるに間がわるくて、ことにも大袈裟に泣いたのである。私は、つるを母だと思っていた。ほんとうの母を、ああ、このひとが母なのか、とはじめて知ったのは、それからずっと、あとのことである。一夜、つるがいなくなった。夢見ごこちで覚えている。唇が、ひやと冷く、目をさますと、つるが、枕もとに、しゃんと坐っていた。ランプは、ほの暗く、けれどもつるは、光るように美しく白く着飾って、まるでよそのひとのように冷く坐っていた。
「起きないか。」小声で、そう言った。
私は起きたいと努力してみたが、眠くて、どうにも、だめなのである。つるは、そっと立って部屋を出ていった。翌る朝、起きてみて、つるが家にいなくなっているのを知って、つるいない、つるいない、とずいぶん苦しく泣きころげた。