Japanische Klassiker mit Furigana
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ふたりのとも
新潮日本文学1 森鴎外集
Lesen Sie 新潮日本文学1 森鴎外集 (ふたりのとも) von Mori Ōgai (森 鴎外) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.954 Zeichen · 29 Bildschirme
水も遣らずに置いたのに、活気に満ちた、青々とした葉が叢がって出た。物の生ずる力は驚くべきものである。あらゆる抗抵に打ち勝って生じ、伸びる。定めて花屋の爺いさんの云ったように、段々球根も殖えることだろう。
硝子戸の外には、霜雪を凌いで福寿草の黄いろい花が咲いた。ヒアシントや貝母も花壇の土を裂いて葉を出しはじめた。書斎の内にはサフランの鉢が相変らず青々としている。
鉢の土は袂屑のような塵に掩われているが、その青々とした色を見れば、無情な主人も折々水位遣らずにはいられない。これは目を娯ましめようとする Egoismus であろうか。それとも私なしに外物を愛する Altruismus であろうか。人間のする事の動機は縦横に交錯して伸びるサフランの葉の如く容易には自分にも分からない。それを強いて、烟脂を舐めた蛙が膓をさらけだして洗うように洗い立てをして見たくもない。今私がこの鉢に水を掛けるように、物に手を出せば弥次馬と云う。手を引き込めておれば、独善と云う。残酷と云う。冷澹と云う。それは人の口である。人の口を顧みていると、一本の手の遣所もなくなる。
これはサフランと云う草と私との歴史である。