Japanische Klassiker mit Furigana
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しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
Lesen Sie 新版 放浪記 (しんぱん ほうろうき) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 247.330 Zeichen · 497 Bildschirme
私はなさけなくなって、遠い故郷へ舌を出した。
(六月×日)
前の屍室には、今夜は青い灯がついている。又兵隊が一人死んだのだろう。青い窓の灯を横ぎって通夜をする兵隊の影が二ツぼんやりうつっている。
「あら! 螢が飛んどる。」
井戸端で黒島伝治さんの細君がぼんやり空を見上げていた。
「ほんとう?」
寝そべっていた私も縁端に出てみたけれど、もう螢も何も見えなかった。
夜。隣の壺井夫婦、黒島夫婦遊びに見える。
壺井さん曰く。
「今日はとても面白かったよ。黒島君と二人で市場へ盥を買いに行ったら、金も払わないのに、三円いくらのつり銭と盥をくれて一寸ドキッとしたぜ。」
「まあ! それはうらやましい、たしか、クヌウト・ハムスンの『飢え』と云う小説の中にも蝋燭を買いに行って、五クローネルのつり銭と蝋燭をただでもらって来るところがありましたね。」
私も夫も、壺井さんの話は一寸うらやましかった。――泥沼に浮いた船のように、何と淋しい私達の長屋だろう。兵営の屍室と墓地と病院と、安カフエーに囲まれたこの太子堂の暗い家もあきあきしてしまった。
「時に、明日はたけのこ飯にしないかね。」
「たけのこ盗みに行くか……」