Japanische Klassiker mit Furigana
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めいじびじんでん
新編 近代美人伝 (上)
長谷川 時雨
Lesen Sie 新編 近代美人伝 (上) (めいじびじんでん) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.076 Zeichen · 256 Bildschirme
何だかこう、昨夕まで濁っていた沼の面が、今朝起きて見ると、すっかりと澄みわたっているので、夢ではないかと思うような気がする。僕はそんな心持ちがするといったら、N氏もほんとにそうだ、私もそういう気持ちがしたと言った」
と抱月氏とも須磨子とも交りのふかかったA氏が話された。そのおりに言葉のつづきで、
「あの人は死によって、あの人の生活を清浄なものにした」
「あの人のぐらい自然な感じのする死はない」
「僕はもうすこしあの人を親切にしてやればよかった」
讃美と感激ののち、沈黙がつづいたはてに、突然ある人が、
「しかし、松井君は随分憎らしかったね」
と言出すと、その一言でその座の沈黙が破れて、その言葉に批判があたえられずに、
「そうだ。やっぱり憎らしい人だったね」
と前の讃美とおなじように連発された。その二つの、まるで異った意味の言葉は、一致しそうもない事でありながら、松井須磨子の場合には不思議に一致して、
(立派な死方をした、しかし随分憎らしい記憶をおいていってくれた人だ)
これが須磨子を知っている人の殆んどが抱いた感じではなかったろうか、この偶然の言葉が須磨子の全生涯を批評しているようだといわれた。